2人掛け

 深夜の梅田駅、阪神電車に乗りこんでみると、車内は2人掛けの席ばかり。しかも、いずれの席にもきれいに1人ずつ先客がいる。みんな窓際の席に座っている。さてどこの席に座ろうか、と考えて困惑する。いかにも阪神沿線といった感じのギャンブル&阪神タイガース大好きっぽいおっさんの隣には座りたくない。だが女性の隣に座って「え、なに、わざわざ私の隣に来たわけ? 狙ってる?」とか思われるのも気まずい。同年代の男だと程よいのだが、こんな日にかぎって見当たらず、いても大股を開きかつダウンジャケットを着こんでいたりして窮屈そう。わざわざその隣へ飛びこんでいくのも馬鹿馬鹿しい。
 ――というわけで、秋口は車両から車両へと移動していき、次第に席が埋まっていき、焦燥感に駆られ、パニック状態に陥り、けっきょく立ったまま文庫本を広げつつ梅田−三ノ宮間を移動する。疲労困憊となる。