帽子

 ニット帽を購入して上機嫌となる。そのまま友人らの家へ向かう。レツゴーに「おい、その帽子、岩崎さんのと同じちゃうか」と指摘される。驚いて岩崎さんを見る。たしかに同じ帽子をかぶっている。似ているだけかな、と思い、両者で帽子を脱ぐ。並べて比較する。
 まったく同じものだ。
 メーカーすら同じ。ただ色が違うだけ。
「おれ、この帽子、2年前からかぶってるねんけどな」と岩崎さん。
 なんたることか。秋口は店でさまざまな帽子をためつすがめつし、購入を決めていた。にもかかわらずかぶった。潜在意識が岩崎さんの帽子を覚えており、「あんなんええな」と思っていた、ということだろうか。
 秋口はショックを受け、絶望し、かぶった帽子をかぶって帰宅する。