カイコ

 両親らと中華料理屋へ。本格的な店。周囲から聞こえてくるのは中国語ばかり。そこで「蚕」という文字の含まれたメニューを見つける。蜂の子みたいなものだろうか、と思って注文する。
 あれれ、たくさんお茄子が出てきたぞ? ――と思ったらすべてカイコ。
 親指大の黒い昆虫が15匹ほど盛られている。揚げられている。見た瞬間に後悔する。
 勇気を出して食べる。外側は揚げたエビ、ただし中身はすべてワタ、匂いはカブトムシ、といった食感。
 注文したからには完食しなければ、という義務感で口に運ぶ。冷めると食べられなくなる、という判断からどんどん箸を伸ばす。
 ちょっとだけ泣く。