神社

 温泉街を歩く。長い石段を見つける。どうやら上に神社があるらしい。興味を惹かれ、登りはじめる。
 石段には厚く雪が積もり、その表面は完全に凍っている。摩擦係数はゼロに近い。雪の間からは金属製の手すりが30センチほど顔を出している。
 その手すりにしがみつき、ほぼ腕の力だけで登りつづける。石段は一般的な建物の5階ぶんほども続いている。
 息が切れ、手がかじかむ。だが引きかえすのも馬鹿馬鹿しい。
 満身創痍になりながらも、ついに頂上へ到達する。
 目の前にはコンクリートで造られた、新しい、ぺらっぺらの神社が鎮座している。
 一気に脱力する。