さすが阪神電車、その2

 終電に乗る。人気もまばらな車内で、60歳ぐらいの男性が紙袋から大量の折り込み広告を取り出す。それらを座席に敷き詰めはじめる。さらに、紙袋の中からトイレットペーパーのロールを1つ取りだす。
 もちろん秋口は瞠目する。
「えっ、ちょっと。嘘でしょ? まさか出すの? ここで? いまから……?」と焦る。
 やがてその男性は、敷き詰められた広告の上に腰を下ろす。トイレットペーパーを適当な長さでちぎり、手のひら大に折りたたみ、そして――自分の顔を入念に拭きはじめる。
「ま、まぎらわしいわ!!!」
 と思う。