利きうまい棒

 SNEの河野裕、安道やすみち、河端ジュン一らと「第1回・利きうまい棒選手権」を開催した。ルールは単純だ。目隠ししてうまい棒を順番に食べていき、「いまのは○○味」と宣言するだけ。用意した味は8種類。事前の試食は禁止。
 最初は簡単すぎると思っていた。だれもが全問正解すると信じていた。だってそうじゃないか? あんなにわかりやすいスナック菓子の味を、いったいだれが間違うっていうんだ?
 だが実際は、お世辞にも簡単とは言えなかった。
 一番手は河野。彼は「うまい棒/チキンカレー味」を食べ、「うわっ、しょっぱい。これは…とんかつソース味?」と宣言。
 いきなり大間違いだ。
 続いて正真正銘のとんかつソース味を口に入れ、「うん? さっきよりソースっぽいぞ。こっちがとんかつソース?」と辛うじて正解。だがいったん乱れたペースは、容易には戻らない。次のエビマヨ味には正解したものの、サラダ味をサラミ味と誤答。
「なんでそんなん間違うよ!?」
 罵倒する周囲に対し、
「いや、めっちゃ口の中パサパサしてくるんよ。味わからん」
「水飲めばいいじゃないですか」
「そうか!」
 などと天然っぽいキャラクターを披露。
「ただ、水は飲んだけど…全体的にしょっぱい。しょっぱいねん!」
 さらに河野はチーズ味をチキンカレー味と、メンタイ味をサラダ味と誤答し、全8問中4問正解、という惨憺たる結果に。
「これ意外と難しいって!」
 叫ぶ河野。
 そうなのか? 本当に、そんなに間違うものなのか? ただ河野が味音痴なだけなんじゃないのか…だがしかし…。
 一同の間に緊張が走る。
 二番手は河端。
 1問目のサラミ、2問目のチキンカレーは正解したものの、チーズ味をコーンポタージュ味と、メンタイ味をエビマヨ味と、さらにはサラダ味をメンタイ味と答えてしまう。
 とんかつソース味に正解したあと、エビマヨ味を口に含み…。
「あれっ、こっちのほうが明らかにエビマヨや。ほなさっきのなんやってん? 俺さっきまで全問正解してるつもりやったのに、急に揺らいできたぞ!」
 すでに3問も間違っているが、当然、周囲は沈黙を守っている。
「残ってるんってなんや…俺がまだ答えてないの…サラダとチーズ? ちょっと待てよ。サラダ味ってなんや。よう考えたら俺、いままでの人生で真剣にサラダと向き合ったことない!」
 真剣にサラダと向き合うってなんだ?
 そんな疑問を周囲に抱かせつつも、河端は苦渋の決断を下す。
「同じ答え2回言うんは間違いを認めることになるけど…自分から全問正解を放棄することになるけど…ここはプライドにこだわってる場合やない。いまの、エビマヨで!」
 さすがに正解。
 続いてコーンポタージュを口に入れ、絶叫する。
「またかぁぁぁぁっ! 完全にコンポタや。これコーンポタージュ以外にないやろ。うわ最悪や。2つも間違ってる。でもコンポタで!」
 またも正解し、河端の成績は8問中5問正解。
 自身の記録を振り返り、河端は蒼白になった。
「ええ嘘っ。メンタイ間違ってる!? おれ人生でいちばん多く食べてるうまい棒がメンタイやのに!」
「ふっふっふ、僕が手本を見せましょう」
 SNE一の天然と名高い安道が宣言する。
 その安道は最初の1本を食べるなり、「グリーンや。グリーンが広がってるで…」と、さっそく電波発言を開始。
「これはサラダ味や!」
 実際はメンタイ味。もちろん間違っている。
 その後も安道の迷言は続く。
 サラダ味を口に入れ、「うんっ? なんやこの味…この味…おいしい!」
「うまい・まずいの話はしてねえぇぇぇぇ!」
  即座に全員が突っ込みを入れる。
 しかも安道、その「おいしい」サラダ味をサラミ味と誤答。
 最終的に8問中5問正解となり、成績としては河端と並んだ。
 最後は秋口。
「なんでみんな間違うわけ? 普通は全問正解でしょ」
 みずからハードルを上げ、上着を脱ぎ捨て、席に腰を下ろす。
 最初にメンタイ味を食べ、間違ってサラダ味と回答。
 この流れ、安道のときと100パーセント同じ。
 だが戦っている本人は知る由もない。むしろ自信満々。「おれが最も繊細な舌を持っているということか…」と自分に酔いまくり、「いまのはメンタイだ!」などと回答を続ける。
 実際はサラダ味なのに。
 結果、それでも成績は決して悪くはなく、8問中6問正解となった。
 皆と共に自身の記録を見下ろす秋口。
「まさかメンタイとサラダを間違えてるとは…あのメンタイ、ぜんぜん磯の香りせんかったぞ」
うまい棒に磯の香りまで求めるのは無茶です!」
 と安道。
「それにしてもメンタイとサラダは魔物やな…全員が間違ってるわ」
「その原因、俺わかりますよ」
 と河端。
「メンタイ味だけ3年ぐらい前にモデルチェンジしたんです。それで味が変わってるんですよ。だからみんな間違った!」
「そもそもサラダ味ってなんやねん!?」
 と河野。
  このようにして「第1回・利きうまい棒選手権」は幕を閉じた。
 思いのほか盛り上がった。